産後クライシスとは?妻が夫を許せない理由と関係修復の方法

コラム

産後うつと産後クライシスで妻が夫を許せない本当の理由を解説。限界を迎えた妻のSOSが伝わらないすれ違いの構造を紐解き、過去の傷を癒やして夫婦の信頼関係を再構築するための具体的なステップを提示します。

産後うつ・産後クライシスで「夫が嫌い」になるのはなぜ?

赤ちゃんが生まれること。
本来なら、幸せいっぱいのはずですよね。
ところが現実は、夜中に何度も起こされる。
授乳して、オムツを替えて、抱っこして、寝かしつけることの繰り返しの生活です。

ようやく寝たと思ったら、また泣くことも日常茶飯事。
ママは眠れずご飯もゆっくり食べられず、お風呂にすら思うように入れない日々が続きます。

今日が何曜日なのかもわからなくなるほど、赤ちゃんのお世話だけで一日が終わっていく感覚の中、

「涙が止まらない」
「何をしても楽しくない」
「母親なのに、赤ちゃんをかわいいと思えない」
「私なんて母親失格だ」

そんな状態になってしまうママがいます。
それが、産後うつです。

日本産婦人科医会によれば、産後うつ病はおよそ10%にみられ、気分の落ち込み、楽しみの喪失、自責感、自己評価の低下などが現れます。

いわゆる「マタニティブルー」は産後1〜2週間ほどでおさまることが多いのに対して、産後うつでは症状が2週間以上続くことさえあります。

これは、
「お母さんになったのだから、しっかりしなさい」
「考えすぎだよ」
「みんな頑張って子育てしているんだから」
と、根性論でどうにかする話ではありません。

産後は、身体的にも心理的にも社会的にも、大きな変化が一気に起こる時期なのです。

睡眠不足。
ホルモンや身体の変化。
自由に外出できない生活。
社会とのつながりが急激に減ること。
そして、
「赤ちゃんを死なせてはいけない」という24時間続く緊張感。

いくつもの負荷が同時に重なっているのですから
産後うつは特別に弱い人だけがなるものではありません。
誰にでも起こりうることだというのを、本人も、そして周りも理解しておく必要があります。

そしてここで問題になるのが、
産後うつと同時に起こる「産後クライシス」です。

産後うつの妻と逃げる夫――夫婦関係が悪化する本当の理由

妻が一番苦しい時、
妻は夫に「協力してほしい」
「一緒に育児や家事を背負ってほしい」と思います。
ところが、この気持ちはなかなか夫に伝わらないことがあります。

妻は、
「もう限界」と、サインを送っているだけなのに、
夫には、
「あなたは父親として何もしていない」
「もっとちゃんとしてよ」
「あなたは役に立たない」
そんなメッセージとして伝わってしまうのです。

夫は、自分が責められているように感じてしまう。

もちろん、妻は夫を傷つけたくて言っているわけではありません。ただ、
一人で背負えないから助けてほしい。
それだけなのです。

ところが夫も、どうしたらいいかわからないのです。
赤ちゃんが泣いても泣き止ませられない。
妻はいつもイライラしている。
何をしても的外れで、怒られるように感じる。

やがて、夫は家に帰っても安らげなくなります。
仕事を理由に帰宅を遅くしたり、
「残業だった」と言って飲みに行ったり、
友達と遊んだり、
家そのものから距離を取ろうとする夫もいます。

「家に帰るのが怖い」と感じるほど、精神的に追い詰められてしまう人もいます。

でも、ここで、夫側にどういう事情があったとしても、妻の中に残る記憶は、

「私が人生で一番苦しかった時、あなたはいなかった。助けてくれなかった」ということ。

私は長くいろいろな世代の夫婦関係の相談を受けてきましたが、
夫婦の現在の問題をずっと遡っていくと、
産後の恨みにたどり着くケースがたくさんありました。

現在は子どもが10歳、あるいは20歳で、表面上は普通に夫婦を続けてきたのに
妻が、
「あの時のことだけは、いまだに許せません」というのです。
夫にしてみれば、すっかり忘れているできごとです。
「そんな昔のこと?」
「もう何年経ってると思ってるの?」という感覚なのに、
妻にとっては、まったく昔の話になっていません。
なぜなら、
ただ家事をしてくれなかったことを恨んでいるのではなく、
自分が本当に壊れそうな時に、夫は逃げた。
そう感じているからです。

妻は、ある時点から、夫を諦めてしまいます。
期待するから傷つく。
だったら期待しなければいい。
「自分でやろう」
「この人には頼らない」
そうやって妻は強くなるのかもしれません。
子どもを守るために、必死に強くなるのです。

けれどその強さと引き換えに、
夫婦の間にあった当然の信頼は
気がつけば消えていた、ということになります。

夫婦の会話が減り、いつしか
子どものことしか話さなくなり、
セックスレスになり、

「子どもを育てるための共同経営者」のようになって行きます。

これが、産後クライシスの怖さなのです。

産後クライシスを防ぐために夫婦が知っておきたいこと

では、どうすればいいのでしょうか。まず、
「産後は夫婦関係が危機になりやすい」ということを、
赤ちゃんが生まれる前から夫婦で知っておくことは、前提として、大切なことかもしれません。

どんなに仲が良い夫婦でも、
睡眠不足になれば余裕がなくなり、ギスギスした空気になります。
産後うつは誰にでも起こりうるのです。

妻が別人のようにイライラすることもあるでしょうし、夫もまた、
今までとはまったく違う家庭環境に戸惑うことがあるでしょう。

最初から、
「そういう時期が来るかもしない」
と話しておくだけでも違います。

そしてもう一つ。
産後の妻のSOSを、
夫婦喧嘩の言葉としてだけ受け取らないことです。

妻が、
「なんで私ばっかりなの!」
と言った時、夫は、
「俺だって仕事している」
と言い返したくなるかもしれません。

でも、その妻の言葉の奥には、
「もう無理」「眠りたい」
「誰かに代わってほしい」
「一人にしないで」
というSOSが隠れているのに、
気づいてほしいのです。

妻側も、限界になるまで我慢して、最後に爆発するやり方では、
夫には伝わらないこと
「もっと手伝ってよ」
の代わりに、
「今日、21時から23時まで赤ちゃんをお願い。私は寝たい」
「明日の午前中、2時間一人になりたい」
「今かなり気持ちが落ちているから、産婦人科に相談したい。一緒に来てほしい」

というように、
具体的なSOSの言葉にすると、夫も受け取りやすいかもしれません。

夫婦二人だけで抱え込まなくてもいい場合もあります。

実家、友人、自治体、産後ケア、助産師、保健師、産婦人科、精神科・心療内科など、
使える人と制度を使ってください。

産後うつでは、パートナーを含めた家族や医療スタッフ、地域の保健師などとの連携も重要とされています。

もし、何をしても楽しくない。
涙が止まらない。
強い自責感がある。
家事や育児ができないほどつらい。
自分や赤ちゃんを傷つけてしまいそうになる。

そんな状態が続いているなら、

「夫婦関係をどうするか」を考える前に、
まずお母さん自身を守ることが必要です。

産後クライシスは、
「夫婦の相性が悪かったから」
という問題ではないのです。

初産なら、二人とも初めてのことだらけですし、2人目以降も、子供2人の育児ははじめてなはずです。やることは、倍に増えます。
妻は限界なのに、
夫はその限界の深刻さがわからないのは、本当によくある話です。

でも、夫もどうしたらいいかわからないから、とりあえず逃げるのも、よくあること。

そこで妻は、
「一番助けてほしい人に見捨てられた」と感じるのも、あなただけではありません。

このすれ違いが、
何年、何十年という夫婦関係に影を落とすことがあります。

産後は、夫婦の愛情を試す時期ではなく、家族全体でママと赤ちゃんを守る時期です。

そして、もし時間が経った今でも
「あの時、夫は助けてくれなかった」
という思いを抱えているのなら、ここで一度向き合ってみるといいかもしれません。

あの時はいっぱいいっぱいで、考える余裕がなかったことも
落ち着いた今なら、違う視点で捉え直すことができます。

夫への信頼はもう二度と戻らないのでしょうか?
そんなことはないはずです。
夫との信頼関係のやり直しは、いつからでも出来ます。

ただ
「昔のことなんだから忘れよう」
と、過去の感情に蓋をしないでくださいね。

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