モラハラ夫と自己愛性人格障害:妻が取るべき境界線と対処法

コラム

夫が自己愛性人格障害やモラハラではないかと悩み、原因の追及に疲れていませんか?夫の診断よりも重要な「起きている事実の把握」と「境界線の設定」について解説します。自分の人生の主導権を取り戻し、これからの生き方を考えていきましょう。

夫は自己愛性人格障害なのでは?

DVやモラハラのご相談を受けていると、「夫が自己愛性障害という病気なのではないか?」と聞かれることがあります。

ネットで調べてみると、

 ● 自分の非を認めない
 ● 人を見下す
 ● 妻の気持ちに共感しない
 ● 少しでも批判されると激怒する
 ● 外では感じがいいのに、家では妻を傷つける
 ● 何でも妻のせいにする

そんな「自己愛性人格障害の特徴」が出てきて、
「うちの夫、そのものだ」
と思う方もいるでしょう。

確かに、自己愛性人格障害の特徴と、モラハラをする人の行動には重なる部分があります。

でも、

モラハラ夫のすべてが、自己愛性人格障害なのではありません。
そして、妻が夫を診断することもできません。

「夫は何の病気なのか?」
と突き止められたら、束の間安心できるような気がしますが、
突き止めたところで夫婦関係は解決されるわけでもありません。

それよりも、私は、この夫婦関係の中で何が起きているのか?
そして、今後、夫婦関係をどうしていきたいのか。

そこを見失わないことだと思います。

自己愛性人格障害の夫?DV・モラハラに苦しむ妻が陥りやすい混乱

まず、「自己愛性人格障害」とは何でしょう。

医学的には、自己愛性人格障害(Narcissistic Personality Disorder:NPD)は、誇大的な自己評価、賞賛を強く必要とすること、他者への共感の乏しさなどが持続し、人間関係や社会生活に支障をきたしている状態を指します。

一方で、その強そうな自己評価の裏側に、不安定な自尊心があり、批判や失敗に非常に敏感な場合があります。批判されたと感じると、怒りや軽蔑で相手を攻撃したり、自分の優位性を守ろうとしたりすることがあります。

ここだけ読むと、
「だから夫はモラハラをするんだ」
と思いますよね。
たとえば妻が、
「その言い方は傷つくから、やめてほしい」と言っただけなのに、
「お前が俺を怒らせるんだろ」
「そんなことで傷つくお前がおかしい」
「俺は間違ったことなんて言っていない」と返してくる。

話し合いをしようとしても、
いつの間にか妻の欠点について延々と何時間にも及ぶ説教をされ、最後には、
「つまり全部、私が悪いの?」
という話にされる。

そういう夫婦は実際にあります。

長くこうした関係にいると、妻はだんだん、
「私が悪かったのかな」
「もっと夫を理解してあげれば変わるのかな」
「私が怒らせなければいいのかな」

と考えるようになります。そして一生懸命、
「夫を怒らせない妻」
になろうとしてしまうのです。

私は夫婦問題のご相談を長く受けてきましたが、ここが非常に怖いところだと思っています。

妻が夫との関係を修復しようとして努力しているつもりが、
いつの間にか、
夫の機嫌を管理することが妻の仕事になる…これは夫婦関係の修復とは違います。

なぜ自己愛性人格障害の特徴がDV・モラハラにつながることがあるのか

ここも誤解しないでほしいところですが、
DVやモラハラをする人が全員、自己愛性人格障害ではありません。

DV・モラハラには、価値観、家庭環境、性格、支配欲、怒りのコントロール、男女観など、さまざまな要因が関係しています。

私の夫も、モラハラでしたが、自己愛性人格障害ではありませんでした。

ただ、自己愛性人格障害にみられる特徴の一部が、夫婦関係の中でモラハラと言われる行動につながることがあります。
それをここで挙げて整理してみましょう。

1.「自分が間違っている」という感覚に耐えにくい

健全な夫婦関係では、
「ごめん。俺の言い方も悪かった」
と言えることがとても大切です。

ところが、自分の価値を保つことに強い不安を抱えている人にとって、

「自分が悪かった」と認めることが、単なる失敗の謝罪ではなく、
「自分そのものの価値の否定を受け入れる」ということのように感じらるのです。

だから、
「俺は悪くない」「お前が原因だ」
という方向へ責任を押し返すことが起こります。

これは、強い不安を持つ夫の特徴で、必ずしも自己愛性人格障害とは言い切れません。

2.妻からの意見を「攻撃」や「侮辱」と受け取る

妻は普通に、「こうしてほしい」
と要望を伝えただけなのに、
夫は、「俺をバカにしているのか」
「何様なんだ」と激怒する。

なぜそこまで怒るのか、妻には理解できません。でも本人の中では、
意見を言われたこと自体を、
「自分の価値を傷つけられた」
と感じている可能性があります。

自己愛性人格障害では、自尊心が他者からの評価に影響されやすく、批判や失敗に敏感であることが知られています。

すると、
自分を守るために相手を下げる。
「お前なんか何もできない」
「俺のおかげで生活できている」
「誰がお前なんか相手にするんだ」

こんな言葉が出て来ます。

自分が上に立つことで、傷つきそうな自分を守っている。

これも、自己愛性人格障害の特徴的ではありますが、
自尊心の低い男性なら、相手を下げて自分を守るような表現をするのは、わりとよくあることです。

3.共感よりも「自分がどう扱われたか」が中心になる

妻が泣いていても、
「俺だって傷ついている」
妻が体調を崩しても、
「じゃあ俺の飯はどうするんだ」
妻が、
「その言葉、本当に傷ついた」
と言っても、
「俺を怒らせたお前に原因がある」
となる。

夫婦の話し合いは、
どちらが勝ったかの話ではありません。
本来なら、
「そう感じたんだね」
と相手の心を想像するところから始まりまるはず。
しかし、共感する力が乏しく、自分の立場を守ることが最優先になっている夫は、
「どちらが正しいか」
「どちらが上か」
という話しかできない傾向があります。

なぜ自己愛性人格障害になるのか?

ここについては、
「親の育て方が悪かったから」
と単純には言えません。

現在も原因は一つに特定されておらず、遺伝的要因、気質、環境、親子関係など複数の要素が関係すると考えられています。

過度に賞賛されること、逆に過度に批判されること、養育環境などが関連する可能性は指摘されていますが、「この育て方をすると自己愛性人格障害になる」と断定できるものはありません。

私は、「夫はどうして自己愛性人格障害になったのだろう?」
もしくは、「モラハラ的な言動をふる人間になったのだろう?」と
妻が深追いしすぎない方がいいと思っています。

「お義母さんの育て方が悪かったから、この人はこうなった」
「夫もかわいそうな人なのだ」

そう解釈すると、
妻が夫の治療者のようにならねばなりません。
夫の生い立ちを理解することは悪いことではありませんが、
どうしてこうなったのか?まで深追いすると、迷宮入りする可能性があります。

夫の心の傷を知ったからといって、妻の傷が癒えるわけではありません。
夫にまた、こうなっている原因をわかってもらおうとすれば、
関係性は更に膠着することさえあります。

自己愛性人格障害・モラハラ夫への妻の対応法

では、どうすればいいのでしょうか?まず、

夫を変えようとすることより、自分の軸を取り戻すことを考える方が、得策だと思います。

1.「夫の診断」より「起きている事実」を見る

「夫は自己愛性人格障害でしょうか?」
という問いを、
少し変えてみてください。
「私は夫から何をされているのだろう?」を整理してみます。

 ● 怒鳴られている
 ● 無視される
 ● 人格を否定される
 ● お金を自由に使わせてもらえない
 ● 友人や家族との交流を制限される
 ● 行動を細かく監視される
 ● 性的なことを強要される
 ● 物を壊される
 ● 脅される
 ● 暴力を振るわれる

診断名がつくかどうかとは別に、
あなたがどう扱われているのか
を事実として、見ることが重要です。

2.正論で夫を打ち負かそうとしない

モラハラにおいては、
「ちゃんと説明すれば分かってもらえる」
と思って、妻が一生懸命根拠を調べて、説明を続けることがあります。

でも、証拠をそろて、完璧な説明をしても、
夫が話し合いそのものを「勝ち負け」と捉えていれば、事態は悪化して行く一方です。
そして妻は、どんどん疲弊していくでしょう。

必要なのは、説得ではなく、境界線です。

たとえば、

怒鳴っている間は話をしない。
人格を否定する言葉が出たら、話はいったん自分の中で終わりにする。
夫のが怒りと、私がその内容を受け入れることは別。

というように、
相手をコントロールする視点ではなく、
自分がどうするか、の線引きを決めるのです。これが境界線です。

夫が自己愛性人格障害かどうかより、大切なこと

ネットで「自己愛性人格障害」と検索すると、
夫の行動を説明してくれる言葉がたくさん出てきます。

長年、
「どうしてこの人はこうなの?」
と苦しんできた妻にとって、
原因らしきものが見つかることは、大きな救いになることもありますよね。

「私だけが悪かったわけではなかったのかもしれない」

そう思えるだけでも、少し心が軽くなるでしょう。

でもそこで止まらないでください。

本当に考えなければならないのは、
「夫は何者なのか」ではなく、「私はどう生きたいのか」です。

夫を分析することに人生を使っていると、いつまでも人生の運転席に夫を座らせていることになります。

夫が変わったのか?それとも、夫が変わらないのか?
いつの間にか、自分の人生なのに、
夫の状態によって自分の幸せが決まることになります。

あなたの人生のハンドルは、誰でもない、あなた自身が握る。

ここが一番大事なことです。

夫を理解することも、
愛することも、
関係を修復することも大切です。

でも、そのために自分を蔑ろにせず、犠牲にもしないでください。

愛とは、我慢することで成立させることではありません。

自分も相手も一人の人間として、尊重される関係をつくっていくことが本当の愛です。

私も、夫にどんな診断名がつくかより、
これからの関係に何が必要なのかを考えることによって
苦境を乗り越えて来ました。

自分の人生のハンドルを、自分で握り直したところから、好転した経緯があります。
あなたがこれから、どう生きて行きたいのか?を
一緒に考えて行きましょう。

関連記事

特集記事

TOP
CLOSE