夫の不倫相手に子供ができたとき、妻が受ける衝撃と法的権利を解説。認知、養育費、相続、慰謝料の知識を持ち、慌てて離婚を決めずに自分の生活と家庭を守るための境界線の引き方と、離婚しないという選択肢について考察します。
夫の不倫相手に子供ができた――妻が受ける衝撃と苦しみ
夫が不倫していた。
それだけでも、これまで信じてきた結婚生活が崩れるほどの出来事です。
そのうえ、不倫相手に子供までできたと知ったら、妻の心には、簡単には言葉にできない衝撃が走ることでしょう。
「この先も、夫とその女性は子供を通してつながり続けるのだろうか?」
「夫の収入が、よその家庭に流れていくということ?」
「夫が亡くなった時、相続はどうなるの?」
「そんな夫と、まだ夫婦でいようとする私はおかしいのだうか?」
怒り、悲しみ、屈辱、嫉妬、恐怖が一度に押し寄せて来るかもしれません。
昨日までは存在しなかった「夫と不倫相手との子供」が、これからの人生にずっと関わってくるように感じられることほど、辛いことはないと思います。
この時、周囲からは、
「そんな夫とは、すぐ離婚した方がいい」
「そこまでされて、なぜ離婚しないの?」
と言われることもあるかもしれません。
もちろん、離婚してしまうのも正当な選択です。
離婚することで、夫の行動をこれ以上監視しなくてよくなり、夫と不倫相手との関係を自分の問題として考え続ける重荷から、解放される人もいます。
けれど、離婚だけが正解ではない、と私は感じています。
離婚するかどうかを決める権利は、周囲ではなく妻側にあります。
深く傷ついた直後に、一生を左右する結論を急ぐ必要もありません。
夫に婚外子ができた時の法律――妻の権利・認知・養育費・相続
感情が大きく揺れている時ほど、法律上の立場を冷静に知っておくことが大切です。
まず、夫が不倫相手との間に子供を作ったからといって、妻の地位が自動的になくなるわけではないことを、冷静に理解してください。
夫が一方的に「離婚する」と言っただけで、離婚が成立するわけでもありません。協議離婚には妻の合意が必要です。裁判で離婚を求める場合にも、法律上の要件と裁判所の判断が必要になります。
婚姻中の妻には、夫婦が生活費を分担する「婚姻費用」を求める権利があります。また、夫が亡くなった時には、法律上の配偶者は常に相続人になります。
ただし、
「籍が入っている妻が強いから、婚外子には何の権利もない」
ということでもありません。
夫がその子を認知すれば、出生時にさかのぼって法律上の父子関係が生じます。その子には、父親から扶養を受ける権利があり、養育費の支払いが問題になります。
さらに、認知された婚外子には相続権があり、相続分は婚姻中の子供と同じです。
たとえば、夫が亡くなり、相続人が妻と子供たちである場合、法定相続分は原則として、妻が2分の1、残りの2分の1をすべての子供で分けます。
婚外子だから相続分が少なくなるわけではありません。
つまり、法律上の妻には確かな権利がありますが、婚外子にも子供として守られる権利があります。
妻が向き合うべき相手は、責任ある行動をしなかった夫であり、事情によっては不倫相手です。
子供の存在を敵にすると、妻自身の心も、ますます苦しくなってしまうことにもなりかねません。
なので、婚外子が出来たことは現実として、そこだけは受け止めなければならないでしょう。
しかし、不貞行為については、夫や、事情によっては不倫相手に慰謝料を請求できる場合もあります。
ただし、婚姻関係がすでに破綻していたか、不倫相手が既婚者だと知っていたか、請求期限を過ぎていないかなどによって結論が変わって来ます。
慌てて自分から妻の立場を手放すことはありません。
持っている権利を確認するだけでも、少しは心が落ち着く…ということもあるかもしれません。
夫がよそに子供を作っても離婚しないという選択――家庭を守る境界線の引き方
夫に婚外子ができた時、
最初にすぐ「離婚する・しない」の結論を出さなければならないか?と言えば、そんなことはありません。
即決する必要はないのです。
心が少しずつ落ち着いて来たら、次のことを一つずつ確認して行きましょう。
・不倫と妊娠・出産、認知に関する事実と証拠を整理する
- 預貯金、保険、不動産、退職金、借金、夫の収入を把握する
- 夫が認知するのか、養育費をいくら、どのように支払うのかを確認する
- 自分と子供の生活費、住まい、教育費が守られる条件を数字にする
- 慰謝料、婚姻費用、離婚、相続への影響を弁護士に相談する
- 不倫相手との連絡や面会について、妻が巻き込まれない境界線を決める
離婚しない場合のメリットもあります。それは、
住まいや生活基盤を急に失わずに済むこと。
子供の生活環境を大きく変えずに済むこと。
婚姻費用や配偶者としての相続上の地位を保ちながら、今後を見極められること。
夫に、夫として、父親として、経済的にも現実的にも責任を取らせる時間を持てること。
そして何より、ショックの中で追い立てられるように人生を決めず、
「私は本当はどう生きたいのか」
を考える猶予が得られることです。
私は、夫婦関係や家族問題のご相談を13年以上受けて来た中で、
夫がよそに子供を作ったあとも離婚せず、自分の家庭は自分の家庭として穏やかに暮らしている妻を何人か見て来ました。
境界線をしっかり引いて、ご自身とお子さんたちの生活の安定を
守り続ける選択をされているのです。
もちろん婚外子がいるという現実を受け止め続けなければならない、精神的な苦痛はゼロにはならないでしょう。
でも、
「その子に責任を持つことは、父親であるあなたの責任」
「けれど、そのために私と子供の生活を犠牲にはさせない」
婚外子の存在を否定しない一方で、自分の家庭まで明け渡さない覚悟を決めた、筋の通った生き方だと思います。
婚外子の存在と、自分の家庭の存在を、分けて考えられることが、「心が広い」ということの本当の意味なのだと私は感じています。
離婚せずに夫婦関係を再構築するなら、必要なのは、ただ我慢することでも、なかったことにすることでもありません。
夫が、妻の傷つきから逃げず、
不倫相手との関係を整理し、
父親としての責任と男女関係を混同しないでいてくれるのか。
妻と現在の家庭を守るために、具体的な行動を積み重ねてくれるのか。
これができないまま「離婚しない」だけを選ぶと、妻の我慢の上に二重生活が続いてしまうことになりかねません。
反対に、境界線を言葉と数字で明確にできるのなら、
婚外子の存在があっても、
自分たちなりの夫婦の形を作り直す余地はあります。
離婚してもいい。
婚外子がいても、再構築してもいい。
再構築を試してから、あらためて離婚を決めてもいいのです。
夫がよそに子供を作ったことで、あなたの価値が下がったわけではありません。
問題は、妻が夫をもう一度信頼しな直せるか、です。
※本稿の法律部分は一般的な情報です。認知、養育費、慰謝料、婚姻費用、離婚、相続の扱いは個別事情で異なるため、具体的な判断は家事事件に詳しい弁護士へご相談ください。